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読後感想「地上の楽園」月村了衛・作/中央公論新社

 1950年代末から行われた在日朝鮮人の帰還事業に翻弄される若者たちの物語(事実に基づくフィクション)です。

 帰還事業についてはとても書ききれませんが、どの角度から見ても悲惨で卑劣な話です。在来の日本人から就職・進学・一般生活まで凄まじい差別を受け、このままでは日本で生きていけないと思う彼らが、北朝鮮への帰国を、当時の日本政府・朝鮮総連・扇動者によって推し進められ「騙されていく」、待ち受けるのは日本での差別よりももっと過酷な無間地獄・・・現代の北朝鮮ですら全くよい話を聞かないのに、金日成体制確立時の帰還者の日々からは、刑務所やヤクザ社会なんてものではない「虫けらのほうがよほど幸せ」というべき惨状が伝わってきます。

 「国ガチャ」という言葉があるかは分かりませんが、半世紀以上前に在日朝鮮人に生まれてこなくて「本当に良かった」と痛感します。彼らを差別して思うのではなく、在日朝鮮人として生まれてきて、彼らと同じように日本人・半島在住者、どちらからも虐げられるなんて、僕だったら耐えられない、それだけです。
 寺尾五郎という社会運動家が書いた「38度線の北」という北朝鮮の社会主義体制を礼賛する本が出てきます。寺尾五郎も同著も実在するらしいのですが、日本での生活に絶望した在日朝鮮人にとって「38度線の北」がどれだけ"地上の楽園へのいざない"となっていたのか・・・驚くのは寺尾のように北朝鮮を肯定する共産党・社会党と、日本から在日朝鮮人を追い出したい政府・自民党との思惑が一致してしまっていたことです。「国家による犯罪」は、決して大げさではない・・・祖国で再び落胆した帰還者たちの悲痛、そして阿鼻叫喚で、物語は埋め尽くされていきます。

 まさか年末年始の浮かれ気分な時間に、このような重苦しい物語を読むことになるとは思いませんでした。重苦しいのに、500ページ近くの長編を最後までスピードが衰えず読み切りました。決してこんな苦しい本ばかり読みたいわけじゃないけれど、「すごいのを読んだな」という辛い達成感は残りました。
 今年も近現代史に軸を置いた本を読むことが多かったような気がしますし、このあと年跨ぎに読む「普天を我が手に(第三部)」も昭和の物語です。事実と創作を交差させながら、これからも近い歴史を深く知ろうと念じました。

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 暗い話ばかりにしてはいけないので、図書館で借りた本を並べてみました。ガタロー☆マンの「ももたろう」は実にくだらなかった。

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by OuiOui1974 | 2025-12-29 17:03 | 本を読んで | Comments(0)