「面白かった、と書けないのが残念」というのが一番の感想です。
また、「これ一冊読む時間で、他の本を数冊読めるなあ」と思ってしまいました。
読書については、僕は「読書は1回読んで面白いと思えるのがいい」という立場です。何度も読まないと面白味が分からない、というのは僕にとっては徒労でしかありません。一読して面白い本だったとしても何度も読みたいと思える、そういう選択肢を与えてくれるのが心地いいのであって、「またこれ読むのかあ」とゲンナリするのは、まるで難しい参考書への向かい方と似ているかなと思います。
それでも本作に対して「もう二度と読むか!」とまでは思いません。確かに僕自身の読みは浅かったです。ゆっくり読むのを楽しむのがいい、と聞いていたのに途中だるくなって斜め読みが増えましたが、実際にはそれほど難解な文章、表現が多いとは思いません。似通った登場人物の多さも極端に気になりませんでした。情景描写が冗長だ、くどくどしいとは思いましたが・・・。
いつの間にか登場人物が結婚していた、死んでいた、という展開がありました。区切りの少ない行のなかの短いフレーズで命が消えるなど、掌の上で手品を見せられるような感覚になりました。
「百年の孤独」の魅力と云われている「現実と非現実の混交」、例えば二百両編成の鉄道で死者を運ぶ、あるいは四年余りも雨が降り続けるなどのシーンは、突飛な展開の漫画にありそうだと思いました。「ドラえもん」や「こち亀」が別次元ではない、現代日本の生活のなかに不思議を淡々と散りばめているのに似ているな、と。そういった非現実的な展開(フレーズ)を通り過ぎた後「あれっ・・・今のっていいのか?」と二度見するかのような体験を得ました。前述の登場人物の件もそうですが、サラッと凄いことが描かれてあって、あとで気づいてページを戻る、そんな読み方が続きました。
「百年の孤独」は、読書を焦る自分を戒めてくれる小説だったのかもしれません。一番最初に書いた思いが改まるのか、やっぱりこういう本は合わないと思うのか、億劫でも再読したいです。