平凡なラーメン屋の、平凡な思い出

　2010年～11年の、（岐阜県）中津川の坂本という地区でアパート住まいしていた頃の話です。

　そこはかなりの田舎でした。お店がポツン、ポツンとある状態。徒歩圏内にコンビニもスーパーも無い。スナックが2店ありました。たまにカラオケの歌声が漏れてくる。ワンちゃんが可愛かったです。店には行かなかったけど。

　そんな田舎に、ポツンと一軒、ラーメン屋がありました。

　とある土曜日の夕方、訪れました。ごく普通のラーメン屋で、しょうゆ、みそ、塩、あと煮干しのラーメンもありました。チャーハンは無し、餃子と唐揚げはあったはず。なぜかカレーライスがありました。

　最初の来店で何を食べたか覚えていませんが、どういうわけか車を使ってでもその店に通うようになりました。美味かったのでしょう。煮干しとか。

　夏になり冷やし中華が出るようになると、僕はそればかり食べるようになりました。瓶のスーパードライと冷酒、それから唐揚げ（普通。硬い）と冷やし中華。普段冷やし中華なんか食べないくせに、ここの冷やし中華はとても気に入ってたんです。

　小さな店に親父さんと（娘さん？40後半ぐらいの）女性の2人で切り盛りしていました。夕方6時くらいに行くとテレビで報道番組を流しているんですが、親父さんは保守思想でずっと（当時の）民主党政権を批判する旨の持論を展開していました。中国船が海保の船に衝突する事件があった頃なんかはすっごい興奮してた。亀井静香みたいな顔（と喋り方）でした。冷やし中華食ってるときに政治の話はきっついなあと思いながら相槌程度には返事していました。

　通い詰めるってほどではないけど、それでも月イチ程度にはこのラーメン屋に行ってたはずです。お客は、少なかったな・・・。

　やがて引越ししたあと1度だけ訪れて「いやぁ何処に行っちゃったと思ってたんだよねえ」などと言われました。その時食べたのは何か忘れました（2回目）が、少し味が落ちてたかなあ・・・数年後にお店は閉じていました。ちょっと寂しかった。

　坂本という場所にはリニア新幹線の岐阜県駅（と列車基地）が置かれることになっています。ここ10年で新しい家が増え、スーパーもコンビニもできました。飲食店（の数）はあんまり変わっていないように見えますが・・・川沿いを歩いて野の花を探していた頃が懐かしいです。

　ラーメン屋は無くなったけど、親父さんはそんなにジジイに見えなかったので、まだ生きてて「やっぱり自民党もダメだね！！」と誰かに喋っていれば、いいのになと思いました。