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「二十歳の原点」高野悦子・著/新潮社

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 現在も新潮文庫で発刊されていますが、僕が図書館で借りたのは1971年(昭和46年)刊行の単行本でした。もしかして検印が押されているのでは??と思いましたが奥付にはありませんでした。昔の単行本は布地のような装丁がいいですね。

 1969年6月に二十歳で自死した著者の、直前6ヶ月のメモノートを拾い上げたものです。
 70年安保真っ只中で、立命館大学の学生だった著者も学生運動に参加して、その様子と思いを綴っています。当時学生運動にのめり込んだ全共闘だか革労協だかの活動家が何か喋っているシーン(文章や当時の映像)を見ると、とっても小難しいことを理詰めで言ってるんですが、さっぱり意味が分かりません。あれって敢えて難しい喋り方を選んでるんじゃないかなあ・・・。理論というより、理屈、理屈というより屁理屈。
 この著者も共産主義の話になるとよく言えば哲学的、悪く言えば自己陶酔としか思えない言葉を綴っています。本の後半に出てきた「私はまだ理論化できていない」という言葉が印象的でした。

 別のレビューでも見かけましたが、結局著者は学生運動ではなく恋愛や実家との関係に深く悩んでいるかのようでした。
 特にバイト先の社員への愛しさと憎しみがジェットコースターのように展開されます。もともと闊達な女性だったのが、何か一本気で思い立ったように行動して、それが自分の中ではうまくいかず、タバコを呑み酒に溺れ、二十歳を迎えた正月の希望感も梅雨どきの六月には絶望に代わっていました。「明日のことは分からない」と歌っているジャズナンバーを聴いていた数日後、著者は電車に飛び込みました。

 「旅に出よう」という出だしで始まる詩を、彼女は残しました(最期に書いた詩ではないらしいが)。理屈ばかりの扇動を綴っていた彼女が、こうも静謐な言葉を書けるのかと思うと、ここで人生を終わらせてしまったことを素に勿体なく感じました。

 僕が二十歳の頃、こんなに悩んでいたかなあ??

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by OuiOui1974 | 2023-11-12 21:17 | 本を読んで | Comments(0)

常に出来心

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