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読後感想「ニュータウンクロニクル」中澤日菜子(光文社)

 ニュータウンに憧れた、という記憶は僕にはありません。
 アパート暮らしは長かったし、子供がいない身としては集合住宅生活の煩わしさにも少しは堪えられるとは思っていますが、巨大団地みたいな場所に自分の身を置くことが想像できないでいます。
 バスに揺られて駅まで行ってそこから通勤通学、という暮らし・・・30年くらい前まで最先端だったニュータウンもずいぶんガタが来ていると聞きます。むかし名古屋へ通学していたとき、春日井市のJR高蔵寺駅で乗降する客の多さで「高蔵寺ニュータウン」の大きさを感じていました。2020年代の今、あの駅やニュータウンは、どうなっていることでしょうか。

 「ニュータウンクロニクル」の舞台、多摩ニュータウンは東京西部の稲城・多摩・八王子・町田の該当地で20万人超が居住しています。高齢化が進んでいるものの人口は現在も増加傾向にあります。本著では商店街の盛衰も題材にしていて、事実、商店や商店街はその通りなのでしょうが、必ずしもニュータウンが過去の遺物となったわけではなく、むしろ物語にもあった「団地の福祉拠点化」やリニューアル・リノベーションなどにも取り組んでいて、住む人々の行動で街は生きたり死んだりするものだな、と思わされました(対照的?といえるのが京都と大阪の間にある「茨木台ニュータウン」。なかなかすごい)。
 1971年~2021年の50年を、10年刻みで綴る連作短編なのですが、なかでも1991年の章はバブル最盛期、放蕩ともいうべき生活(投資、トレンディ、不倫・・・)が描かれていて、よく覚えているだけに恥ずかしいやら情けないやらという気持ちにもなりました。実際の歴史と同様に、そんな生活は続くわけもなく、人が街とともに没落していく悲しさも伝わりましたが、いっぽうで「昔を懐かしむ姿」も夕日の輝きのようで魅了されるものがありました。

 僕らが今住んでいる街も、例外に漏れず変化しています。お店や会社、人の流れは、30年くらい経過してどうなってしまうのか。「地道に暮らすことができる」環境であれば、いいのになと思います。


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by OuiOui1974 | 2022-05-17 21:49 | 本を読んで | Comments(0)

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