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読後感想「長い道」(宮崎かづゑ/みすず書房)

 ハンセン病(らい病)患者の方の映像をいままで何度か見たことがあります。顔の肉がただれ、曲がり、まるで火傷の痕のようでした。

 これが外傷ではなく病気のせいだ、それなら、たとえ伝染しない病だと分かっていても「触られたくない」「伝染するかもしれない」といった感情が私の中から滲み出るのを隠せないことが、過去には少なからずありました。

 この「長い道」では、著者の宮崎さんが自らのハンセン病の進行を綴っています。しかし、病の苦しみを訴えていることをことさら強調してはいません。
 むしろ「私だけ、らい患者だけが特異で、皆様とは大きく違う人生とは思えない」「人間はどこの果てにいっても差別するもの、人間がいるところ必ず差別があると思うので、らい患者だけが差別されているような言い方は、私、あまり賛成じゃありません」など、私が抱く罪悪感なんて意に介さないくらい、あたかも流すかのように語られていました。
 「幸せはいつも自分のこころが決める」という相田みつをの言葉がありますが、私は、宮崎さんからそんなふうにやんわりと諭された気持ちにもなりました。

 「若いころを振り返ると、らい患者であるということはさておき、喜んだり、苦しんだり、生活することにいっしょうけんめいの毎日だったように思います。でも、頑張りませんでした。楽しかった」という一文が目に留まりました。この本を通して、宮崎さんが指や足が欠損するなど生活に不自由しながらも、それを不幸だと思わず料理や縫物、読書、(同じ病を患っている)夫や園の人とのやりとりを楽しむ姿が印象的でした。懸命に生きている部分はあっても、必死さは感じられない。生きる糧とし、心を豊かにする宮崎さんの暮らしぶりに終始惹かれました。
 また、死が近づきながらも笑顔をふりまく友人「トヨちゃん」との日々は胸に来るものがありました。特に、阪神ファンだったトヨちゃんが、宮崎さんや医師、看護師らと岡山でのプロ野球観戦に出かける部分はその心躍る向きが伝わってきました。片耳と味覚以外が不自由なトヨちゃんが「幸せだなあ」と繰り返す・・・本当の幸福について、深く考えさせられました。
 与えられた命、時間を惜しみなく生きる彼女たちの姿、見習っていきたいと思います。


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by OuiOui1974 | 2022-03-30 20:51 | 本を読んで | Comments(0)
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