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「廃棄物処理法の解説」をめぐる葛藤

 書店勤めの際、お客さんが注文された本の問屋などへの発注業務をしていた頃の話をします。20年以上前の話なので、現在と状況が異なることを付け加えておきます。

 本というのは全ての書籍雑誌を手配できるわけではありません。僕のいた店では週刊誌や人気コミック本などは注文を受けていませんでした。
 注文できない書籍雑誌の一つに「官報扱い」がありました。政府刊行物です。防衛白書とか外交青書といった有名どころから、小難しそうな現行法の解説本など様々。値段も高めです。お客さんが直接官庁の販売所へ注文すれば手に入りますが、書店が問屋経由で官報扱いを仕入れるのは困難な時代がありました(時間がかかる、そもそも問屋に入れてくれない、など)。原則注文不可としてお断りすることが多かったです。
 しかし、以前紹介した「店長の怖い」支店で勤務していた頃、お客さんから何冊か官報扱いの注文を受けました。受注段階では官報と分からず、問屋にFAXしたあと「官報扱い注文不可」と返事が来て判明するパターンですが、当の店長が「官報だって取れる(仕入れることができる)」、もう一度注文しろと言ってきました。問屋がダメって言ってるんだから断っていいだろうと思ったものの、店長が怖くて言うこと聞くしかありませんでした。
 再度問屋に注文して無理なのか尋ねたところ「いつ入ってくるか分からないが、刊行元には注文を流しておく」と返事をもらい、しばらく様子見することになりました。お客さんにも同様の説明をしました。急ぐ様子でもなかったのが幸いでした(が、諦めてくれればさらによかった)。
 通常、書店・問屋・出版元を介しての注文は、入荷するのに3週間程度かかりました。これだけでも遅いのに、今回の注文分は1ヶ月、2ヶ月経っても商品は入荷しませんでした。そうすると発注担当者としてはとても不安になるわけです。だから最初から「無理ですすみません」と断ればよかったのに。店長にまだ入らないと報告しても「おかしいな」だけしか言わない。てめえハゲこの野郎とか本気で思いました。当時は。

 そのうち、何冊かは入荷があり、最後に「廃棄物処理法の解説」という本だけが未入荷状態。しびれを切らした僕は休みの日に都市部の大型書店でこの「廃棄物処理法の解説」が無いか、探しまくりました。大きな本屋は政府刊行物も常備してあることを知っていました。もしかしたらあるかも・・・というか、あったら自費で購入するつもりで、それってバカじゃないのと思いますが当時は真剣でした。確か5,000円くらいする。結局見つかりませんでした。
 春に受注した「廃棄物処理法の解説」は夏の終わりになっても入荷せず、お客さんには「全く来ないので受注不可としてほしい」と伝え了承いただきました。
 ところが、秋が深くなったころになって、「廃棄物処理法の解説」が入荷したのです。非常に困りました。もうキャンセルとなった品が今頃になって入っても困る、買い切り商品なので返本もできない・・・今思えば、お客さんに「実は今頃になって入りました」と叱られ覚悟で連絡すればよかったんですが、しませんでした。
 その後、「廃棄物処理法の解説」をどうしたのか覚えていません。版元了解返本という手段もあったかもしれませんが、たぶんショタレ(不良在庫)として棚卸時に処分したのだと思います。高い本なのに・・・。
 まず、店長の安請け合いを恨みました。結果入荷できた官報扱いもあったけど、これを仕入れるのに管理コストどんだけかけてんのよ、と(書籍は粗利益が低い。1000円の本を売って粗利が2割程度)。問屋も個別受注は雑な扱いだったので、手配状況などはさっぱりでした。最後に自分自身。ウジウジ悩んで徒労感でいっぱいになりました。

 「廃棄物処理法の解説」は令和2年版も出ているくらいですからある意味ロングセラーというか、業界関係者の方にとってはマストアイテムなのでしょう。今はインターネットサイトで購入できるし、在庫があれば半年どころか1週間もかからないと思います(僕が悩んでいた頃はAmazonすらなかった)。こと書籍に関しては、ネット通販で入手できるようになってよかったと思います。今は書店での注文普及率がどうなのか分かりません。少しは改善してるのかな。
 そのうち官報扱いも電子版が普及するようになるかも。そうすりゃ注文、即入手だよね。


※と、ここまで書いておいた後で知ったんだけど、たとえば防衛白書も外交青書も省庁のサイトで無料で読めることが判明。紙版は有料です。


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by OuiOui1974 | 2021-11-08 18:39 | 今までのまとめ・回想録 | Comments(0)

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